一度入れば半日ゆっくり過ごす、台湾茶芸館の贅沢なひととき

台中郊外の茶芸館にて
日本と同じくお茶文化の台湾。緑茶とウーロン茶との違いはあれど、生活の中に溶け込んだその両国のお茶文化はお互いに通じ合うところがあります。お店の店先で出されたおもてなしのお茶、食事の際に大きな急須にお湯を注いでくれるジャスミン茶、そして平渓天燈節などのビックイベントの際、並んでいる人にふるまわれる温かいウーロン茶。そのシーンのどれをとっても、同じアジアの国にいる居心地の良さを感じてしまいます。そんな居心地の温かい台湾のお茶文化の中でも最高峰のものがあります。それは茶芸館でお茶を楽しむということ。茶芸館はいわば伝統的な喫茶店、とにかくお茶を飲むことだけに特化した場所です。日本でいうなら甘味処といったところでしょうか。お茶と簡単なお菓子を楽しむだけの空間です。ただし、日本と違うのは一度入って席についてしまうと長い時間をそこでゆったり過ごすことができます。そんな茶芸館を楽しんでみませんか。
茶芸館の独特なシステム
茶芸館ではまず席に案内されると、ウーロン茶のリストを渡されます。そのお店で扱っているお茶の種類と原産地、特徴などが描かれた紙です。まるで一流レストランでワインのリストを渡されるのと同じような感じ。そう、まるでワインなのです。レストランでのワインの場合、グラスワインでの提供を除いて、ボトル一本をみんなでシェアして、そのボトルが開くまで飲み続けるわけですが、茶芸館でのお茶も同じ形になります。茶葉の袋を一種類選んで、その袋が開くまで基本飲み続けるという形です。といっても、袋に入った茶葉の量はなかなか1日で飲みきれる量ではないので、最後は残った茶葉を持って帰るという形になります。あまり一日で何種類もの茶葉を試すという形ではないので、ご注意ください。(色々な茶葉を試したいという方は茶芸館ではなく、お茶屋さんで試飲させてもらうといいですよ。お茶屋さんの茶葉のほうが茶芸館で買うより安いです。茶芸館はお茶をゆっくりと楽しむ為の場所とお考えください。)ここで早くもお会計のことですが、基本茶芸館ではその茶葉代、それとお湯代(席や茶器のレンタルとお湯の費用)、そして茶器でお茶を入れるデモンストレーションの代金が加算されます。勿論、入れ方を知っている人は店員さんを呼ぶ必要はありませんし、その費用もかかりません。ただ、茶器を使って入れるのが初めての人は是非、店員さんを呼んで、入れ方を教えてもらってください。そのほうがお茶の香りがさらに膨らむはずです。なお、お茶は一杯目に入れる手順が一番難しいので、そこは店員さんにデモンストレーションでお願いしてしまえば後は大丈夫。あとは一度やり方を見てしまえば、同じお茶の国の日本人、自分でも淹れられるようになるはずです。
細長い茶碗と、小さな茶碗
出典:http://allabout.co.jp/gm/gc/187755/2/
お湯が沸き、お茶を入れる準備ができると、二種類の茶碗にお湯を注いで洗ってもらい、目の前に置かれます。一つは細長い茶碗、もう一つは面の広い小さな茶碗です。細長い方は香を嗅ぐための茶碗、そして小さな方はお茶を飲む為の茶碗です。日本茶と違い、ウーロン茶は淹れるのに時間がかかりますので、ゆったりとお茶が入るのを待ちましよう。そしてその時間が経つと、お茶を細長い茶碗に淹れてくれますので、私達はその茶碗が熱くならないうちにすぐ中身を隣の小さな茶碗に移してください。そして中身のなくなった細長い茶碗を鼻先に近づけ、香りをかいでください。ふぅわぁっといい香りが鼻の奥まで抜けるはずです。
香りを楽しんだら、小さな茶碗に持ち替え、一口お茶をすすり、味を楽しみます。そして今度は冷たくなった細長い茶碗を再度手に取り、香りを嗅ぎます。これを冷香といい、さっきとはまた違う香りがするはずです。最後に冷たくなった細長い茶碗を手の平で温めながら香りをかいでみてください。これを暖香といいます。体温で少し温まると、またふたたび違った香りがひらきます。これが一杯目の流れです。二杯目のお茶を注いでもらうと、今度はお茶の色がより濃く出ます。台湾ウーロン茶は一杯目に香りを楽しむもの、そして二杯目からは味を楽しむものとして考えられています。一杯目に頂いた味より更に濃く、美味しく飲めるのが二杯目のお茶です。その代わり、香りは一杯目よりも飛んでしまっています。その為、二杯目以降のお茶に関してはいきなり小さな茶碗にお茶を注いでもかまいません。茶葉にもよりますが、茶葉一回に対して5杯くらい淹れることができるはずです。これがワンクール。茶芸館の茶葉の販売量だと、これを5回から10回程度は軽く行うことができます。一度席につくと、長くお茶を楽しむことができるのはこのせいです。茶芸館のお湯代は意外と高めに設定されていますが、その分一日居ることもできるので、ゆったりと楽しむにはうってつけです。
お庭や景色を楽しみつつ、御茶菓子を楽しむ。
茶芸館での茶菓子は簡単なものが多いです。砂糖漬けにした菱(ひし)の実や、炒ったかぼちゃの種など、お茶受けとしてゆっくり楽しむものが多いです。それらのお菓子はお茶の香りを邪魔しないものが多いので、安心して食べることができます。茶芸館は建物や内装、お庭や景色を楽しめるお店が多いので、最低半日はゆっくりと好きな本でも持ち込んで、楽しんでみてはいかがでしょうか。
最後に
あまり時間のない旅行者にとって、茶芸館はある意味最大級の贅沢となるかもしれません。たっぷりと時間を費やして楽しむこのスタイルは日本にはあまりないものかもしれませんが、心の贅沢として一度は体験していただきたいものです。なお、この茶芸館、一人で入っても、4人で入っても、さほど金額はかわりません。できればご家族や友人、大切なだれかとゆったり過ごす時に使われてみてはいかがですか。