願いを書いて天まで届け、十分・平渓ランタン


天燈をご存じでしょうか。天に向かって燈籠を上げるという意味なのですが、その意味の通り、紙でできた小さな気球みたいな燈籠の中で油のついた紙を燃やし、燈籠の中の空気を温めて、空高く舞い上げるというなんとも幻想的な風習です。台湾だけでなく、
韓国、中国大陸、タイなどの東南アジアや遠くはポーランドなどでも行われている風習です。遥か昔は天燈を通信の手段として使ったといわれていますが、現在では小正月やなどのお祝いとして、また願い事を書いて空へと上げる風習として各地で行われています。

各地のイベントに出かけるとなると



天燈上げ(英語名:スカイランタンSky Lantern)で特に有名なお祭りは平渓(台湾)天燈節、チェンマイ(タイ)のコムローイ祭り、ポズナン(ポーランド)の聖ヨハネ祭などが有名です。ランタンの大きさはそれぞれ違いますが、どのお祭りも夜に数百から数千のランタンを飛ばします。暗闇の中、自分の視界に収まりきらない多くのランタンが明かりを灯して空へと浮かび上がるその光景は、言葉ではいいつくせないほど美しく、幻想的です。但し、これらのお祭りのほとんどは、日本からツアー等を利用して参加する事はできません。自力でその開催日に現地まで辿り付き、申込み等も済まさなければならないので、なかなか大変です。

でも、一年を通じて誰でも気軽にできる所が、、
また、自力で行ける体力のある方でも、世界各地で行われている天燈上げの多くが、小正月や現地の祝日にあたる日に開かれる事が多く(つまりは日本ではその日は平日である事が多いのです!)、旅行者が日程を調整し、現地に行くのはなかなか大変です。ですが、ご安心を!日本とはお隣の台湾では、個人が好きな時に天燈上げを行えます。台湾の十分や平渓と呼ばれる地域では、一年を通じて天燈上げを行う事が出来る世界でも珍しい地域なのです。そんな台湾の天燈上げにいってきました。

台北から約1時間半、十分と平渓の町



台北駅から東部幹線で瑞芳まで約40分、そこで平渓線に乗り換えること約30分、乗り換えの所要時間も入れれば一時間半といったところでしょうか。平渓線の十分駅についた時、目を疑いました。あれ、線路の中に人が沢山いるのです。それも電車の目の前に。線路沿いに商店街のお土産屋さんが立ち並び、線路はあたかも歩行者用の道みたいです。一応立入禁止の札はたっていますが、なんのこっちゃ、気にしている人は誰もいないのです。大勢の人が線路の上に繰り出しています。因みに、お隣の平渓駅の前も同じようなもの。こんなに大勢の人も、電車が来る頃になると商店街に音楽がかかり、それを合図にみんな軒先へと逃げ込みます。それでも気が付かない人は?というと、最終的に警備の人に笛を吹かれ、さらにはゆっくり走ってくる電車に警笛を鳴らされて慌ててにげていきます。この路線、日本の鎌倉、江ノ電とこんな様子が似ているとのことで、提携関係を結んでいるそうですが、江ノ電でもさすがにこんな話はありません。(汗)ちなみに、2015年4月現在、平渓線で一日乗車券を買うと、後日その使用済切符を江ノ電の窓口に持ち込むと、今度は江ノ電の一日乗車券になるそうです。

いよいよランタンを上げてみます。



まず、十分でも、平渓でも、どちらの駅でもいいので、降りて、近くのお土産屋さんにいけば、ランタンは店先に山積みとなって置いてあります。様々な色のものがあり、健康や金運など、願い事の目的に分かれて、色が決まっているそうです。因みに総合的に幸せを祈る色は赤です。今回は赤を上げてみたいと思います。

お金を払って、ランタンを受け取ったあと、吊るして願い事をランタンに書き綴ります。その際、ルールがあり、ランタンの4面すべてに願い事を書く事、そして自分の名前を書くことです。厳密にいうと、住所も書いたほうがいいということですが、それも怖いので、名前だけにしておきましょう。備え付けの筆やペンで大切なお願いを心込めて大きく書き、幸せと安泰を祈ります。グループの人なら、一人1面、4人で4面と願い事を書く事もできます。書き終えたら、墨が乾くのを待って、ランタンを持ち、線路の上まで?!向かいます。



すると、係りの人が寄ってきて線路上に案内してくれ、油がついた紙の束をランタンの中に入れて飛ばす準備をしてくれました。いざ、点火。しばらくはなんでもないのですが、段々中の空気が膨らんできて、しっかりと手で押さえていないと、飛んで行きそうになります。もっとランタンがパンパンに膨らむまで待ちます。



パンパンに膨らむと、ランタンを手で押さえているのも大変です。せーのの掛け声でみんな同時に手を放します。すると、ふわりと浮きあがったランタンがどんどんと高く昇っていきます。もっとゆっくりと昇っていくのかと思えば、ランタンが昇るのはあっという間です。思わず見上げてしまいます。すぐに飛ばしたランタンは見えなくなってゆきました。天までちゃんと願いが届きますように。

最後に、
あこがれだったランタン上げは、アッという間に手から離れていきました。写真を撮っているとあっという間です。今度は写真を取らずに、ゆっくりとみることができたらなと思います。本当に気軽にあげられるので、台湾に行かれる方は是非ランタン上げに出かけてみてください。



音楽が流れだしたので、線路脇へと逃げます。電車はもう目の前です。(汗)これからランタンを飛ばす方も、電車には本当に注意してくださいね。